[第23回]国家試験解説[AP令和5年秋]

応用情報技術者試験 令和5年秋期 問57

フルバックアップ方式と差分バックアップ方式とを用いた運用に関する記述のうち,適切なものはどれか。

ア:障害からの復旧時に差分バックアップのデータだけ処理すればよいので,フルバックアップ方式に比べ,差分バックアップ方式は復旧時間が短い。

イ:フルバックアップのデータで復元した後に,差分バックアップのデータを反映させて復旧する。

ウ:フルバックアップ方式と差分バックアップ方式とを併用して運用することはできない。

エ:フルバックアップ方式に比べ,差分バックアップ方式はバックアップに要する時間が長い。

出典 IPA公開[過去問題]:https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/ps6vr70000010d6y-att/2023r05a_ap_am_qs.pdf

フルバックアップ方式とは

データベースやHDD/SSDなどに保存されている全てのデータのコピーを取ることです。

全てのデータを別の記憶媒体にコピーするので、データベースやHDD/SSDに保存されているデータが消えてしまっても復活させることができます。その反面、全てのデータを別の記憶媒体にコピーするのでコピーするのに時間がかかるうえ、復活させるときにも時間がかかります。

差分バックアップ方式とは

前回に実施したフルバックアップ以降に作成したデータや更新したデータのコピーを取ることです。フルバックアップ方式と違ってコピーを取る対象が少ないのでデータ容量もコピー時間も少ないのがメリットです。データベースやHDD/SSDに障害が発生し、データを復活させる場合は、値最新版のフルバックアップファイル+最新版の差分バックアップファイルを使います。

例)金曜日に障害が発生し、データを復活させます。まず、月曜日に取ったフルバックアップファイルを使って全てのデータを復活させます。このままでは月曜日以降に更新したファイルは古いままなので木曜日の差分バックアップファイルを使って最新の状態に更新します。※木曜日の差分バックアップファイルには火曜日・水曜日に更新したファイルも入っているので使うのは木曜日の差分バックアップファイルだけでOKです。

増分バックアップ方式とは

前回に実施したバックアップ(フル・差分・増分)以降に作成したデータや更新したデータのコピーを取ることです。フルバックアップ方式・差分バックアップ方式よりも保存するデータ量が少ないのがメリットです。しかし、データを復活させる際は最新版のフルバックアップファイル+それ以降に保存した増分バックアップファイルを1つずつ使います。

差分バックアップ方式では最新版のバックアップファイルだけでよかったのですが、増分バックアップファイル方式では古いバックアップファイルから1つずつ順番に使わなければならないのが大きな違いです。

例)金曜日に障害が発生し、データを復活させます。まず、月曜日に取ったフルバックアップファイルを使って全てのデータを復活させます。このままでは月曜日以降に更新したファイルは古いままなので火曜日⇒水曜日⇒木曜日と順番に増分バックアップファイルを使って段階的に最新の状態に更新します。※増分バックアップ方式では差分バックアップ方式と違って、それぞれのバックアップファイルで重複データがないので1つずつ順番に使う必要があります。

正解は、「イ:フルバックアップのデータで復元した後に,差分バックアップのデータを反映させて復旧する。」です。